何年かに一度観たくなる映画がある。
リクルートの新人時代、お客様である中小企業の社長から、
「“カッコウの巣の上で”という映画を観たことがあるか」。
と聞かれた。当時私はその映画を観たことがなかった。
「二十代、三十代、四十代、五十代と繰り返し観ると、
その度ごとに新しい感慨を抱く映画というものがあるが、
この映画はその一つだよ」。と教えてもらった。
あれからもう20年が過ぎた。
その間、“カッコウ”を3回観たが、
確かに毎回違う感想を持ったし、新しい気づきを得た。
人生にはそういうものがあるんだ知った。
繰り返し触れることで人生の本質に触れることができるもの。
本、絵画、映画、音楽、風景。社長には感謝している。
私にとってそういうものの一つに、開高健氏がある。
氏の作品との出会いは、大学一年の時。
浪人中の友達が夢中になって読んでいた短編集だった。
これまで読んだどの小説とも違う独自の筆致。
人間や、世の中、歴史さえも俯瞰した視点の高さ、
言葉の強さ、ねばり、湿度。圧倒された。
短い短編ですら、読み切るのにエネルギーを要した。
読みにくいのでも、読めないのではない。
腹に落として味わい尽くしたくなるのだ。
私にとって、「輝ける闇」と「夏の闇」は、
文学の一つの頂点だ。
のちに氏は釣り師になる。釣り師となった氏が、
アラスカの地で釣りをしながら人生を語るビデオがある。
それが「河は眠らない」だ。
何年かに一度必ず観たくなるビデオだ。
観る度に気づきがある。
そして、人生を前向きに生きる気力が満ちてくる。
「ナースログ」
「キャッチアンドリリース」
「三十代の生き方」
「失うことの意味」
「ランプの消えぬ間に生を楽しめよ」
「唯物論としての輪廻転生」
「うまくち」
「絶対矛盾的自己同一」
一本のビデオの中に人生の本質を表す、
いくつものキーワードがちりばめられている。
よろしければぜひご覧いただきたい。
なお、飲める方は傍らにシングルモルトを用意してから
ご覧になることをオススメする。
河は眠らない(開高健)
http://p.tl/eAp7
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