2011年2月16日水曜日

河は眠らない。

何年かに一度観たくなる映画がある。

リクルートの新人時代、お客様である中小企業の社長から、
「“カッコウの巣の上で”という映画を観たことがあるか」。
と聞かれた。当時私はその映画を観たことがなかった。

「二十代、三十代、四十代、五十代と繰り返し観ると、
その度ごとに新しい感慨を抱く映画というものがあるが、
この映画はその一つだよ」。と教えてもらった。

あれからもう20年が過ぎた。
その間、“カッコウ”を3回観たが、
確かに毎回違う感想を持ったし、新しい気づきを得た。

人生にはそういうものがあるんだ知った。
繰り返し触れることで人生の本質に触れることができるもの。
本、絵画、映画、音楽、風景。社長には感謝している。

私にとってそういうものの一つに、開高健氏がある。
氏の作品との出会いは、大学一年の時。
浪人中の友達が夢中になって読んでいた短編集だった。

これまで読んだどの小説とも違う独自の筆致。
人間や、世の中、歴史さえも俯瞰した視点の高さ、
言葉の強さ、ねばり、湿度。圧倒された。

短い短編ですら、読み切るのにエネルギーを要した。
読みにくいのでも、読めないのではない。
腹に落として味わい尽くしたくなるのだ。

私にとって、「輝ける闇」と「夏の闇」は、
文学の一つの頂点だ。

のちに氏は釣り師になる。釣り師となった氏が、
アラスカの地で釣りをしながら人生を語るビデオがある。

それが「河は眠らない」だ。
何年かに一度必ず観たくなるビデオだ。
観る度に気づきがある。
そして、人生を前向きに生きる気力が満ちてくる。

「ナースログ」
「キャッチアンドリリース」
「三十代の生き方」
「失うことの意味」
「ランプの消えぬ間に生を楽しめよ」
「唯物論としての輪廻転生」
「うまくち」
「絶対矛盾的自己同一」

一本のビデオの中に人生の本質を表す、
いくつものキーワードがちりばめられている。

よろしければぜひご覧いただきたい。
なお、飲める方は傍らにシングルモルトを用意してから
ご覧になることをオススメする。

河は眠らない(開高健)
http://p.tl/eAp7

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